臨床研究をしたいけど良いトピックって一体どうやって見つければいいのだろうか。
そしてトップジャーナルに安定したペースで出し続ける、超絶アイデアの錬金術師の様な研究者はどうやってトピックを探しているのか。
僕が思う錬金術師の方とこの話をしたのでそれを元に書きたい。
まずはじめに、ある程度のインプットと蓄積が無いとトピックの形成に至らない、という様なことを言われたが、そうだと思う。
分野内の狙い目や境界線を把握するために必要な、最低限のデザインや統計手法、そしてトピックの知識量があると思うのでまずそこを越えることが大事かと。
そしてトピックの知識が増えるほど既知と未知の境界線がハッキリして狙い目が見えてくるはず。
もし僕が僧帽弁置換後の抗凝固剤の使用とアウトカムに関する全てのペーパーを把握していたら、そのトピックでは大体どのようなアプローチで研究が行われていて、何が知られていなくて、どのクエスチョンが医療的に重要で、その内どれが検証可能か、という絞り込みは簡単にできるのではないかと想像する。
つまり自分が最強の論文カタログになってしまえば、脳内Googleでやったらいいトピックが検索されてきてあとは実行すればいいだけ、という状態。
そんなステキな境地に到達できる日は来るのだろうか。
ただ限られた範囲でなら割と簡単にトピックのエキスパートになれてしまうところが、広く浅い(?)臨床研究の世界の楽しいところかとも思う。
あとは点と点をいい感じにつなげる想像力が少しは必要なのかと思うが、有限パターンからの引き出しだと思うのでかなりインプットでカバーできる気がする。
トピック探しは努力次第、という結論。
特別な内容ではないと思うのだが一応僕がインプットに使うソース三つ:
ガイドライン

ガイドラインがアイデアの宝庫なのは、
1)トピックの重要ペーパーが詰まっている
2)どのトピックでエビデンスが弱いかが一目瞭然
いわば質の高いエビデンスを分野のドン達がいい感じに選りすぐってrecommendationに落とし込んだものなので、そのrecommendation を支える引用文献の上を行けば結構な確率で分野最先端の研究になり得るというロジック。
もちろん質の高いペーパーが引用されているのでそう簡単に勝ちにはいけないが、境界線を見ておけばその後の狙い目もわかりやすくなると思う。
また、Level of evidence が明記されているのでどの辺のエビデンスが弱いかが一目でわかる。LOE C なんて結構露骨な狙い目ではないか。ただ検証が難しいからエビデンス層が薄いということも多いと思うので吟味は必要だと思う。
ガイドラインの弱点はインターバルではないだろうか。例えば2014年に出たガイドラインが2020年現在改定されていない場合、かなりのエビデンスがその間に生まれているのでインターバルのレビューが必要。
また、微妙なSociety からのガイドラインや変なconsensus statement も存在するのでそこは見極めが大事かと。
Review paper

これもガイドラインと全く同じロジックで、特に良いジャーナルに載った質の高いものが参考になる。
分かっている事と分かっていない事が書かれていることが多いはずなので一本の中に結構な数のアイデアが隠れていると思う。
レビューの延長にあるのが原著論文のDiscussions section だと思うのだが、原著論文内でレビューほどエビデンスがしっかりまとめられていることは少ないのでは。
なのでガイドラインに続いて、レビューペーパーは幅広めのトピックに短時間でアクセスできるソースだと思う。
解釈が微妙なところで乱用されている気はあるが、”X remains unknown.” とか“Y needs to be investigated in the future.” みたいなところから拾ってくるのもアリかもしれない。
専門科ジャーナルの論文

自分の科の専門誌を読んで、トピックとしてはいいのに規模が小さかったりデザインが弱いスタディーを見つけてくる。
例えば、50−70歳の患者に対する大動脈弁置換の時に機械弁か生体弁にするべきか?なんていう論文は単一施設のスケールの小さいものが専門誌には結構載っていたのだが、それを州レベルのデータでやった論文がJAMAに載っている。
このファーストオーサーは僕の同級生で、レジデンシーの面接やらで顔を見ることが多くて知りあったのだが、彼は医学部最終学年でJAMAの論文を2本書いた猛者。
要は、トピックとしてはよく練られているスタディーを元にして、強いデータや解析でその上を狙うやり方。
あと原著でやられたリサーチクエスチョンは大体メタアナリシスに転換できるトピックだと思う。
まとめ
インプットをたくさんすれば良いアイデアが浮かぶかもしれない。