文春の記事にどこまで真面目にツッコんでいいのか分からないのだが、一応おかしかった点を挙げていく。
ネタ記事はこちら。2006年のインタビューを元にしているとのこと。
米国のコーネル大学を21歳で卒業。
当人曰く、飛び級しまくって15歳で6年一貫プログラムに入学したらしい。
あり得ないことではないが、おそらくコーネルに本名で照会してもらわないと否定しきれないのでスルー。一応文春の記事では照会してもらって存在していない、ということだったらしいが本名ではない可能性をフェアに考慮したい。
そして6年プログラムの数自体が少ないし1991年前後にコーネルにこの制度があったかは不明。2020年現在、米国のコーネル大に一貫プログラムは無い。

だた、コーネル大・カタール校には2014年から6年プログラムが存在している様子。
医学部卒後の経歴
米国で1990-2000年代に心臓外科医になるにはまずACGMEという機構に認定された5年の一般外科レジデンシーを卒業し、その後に2−3年の胸部心臓外科フェローシップに入らなければいけなかったはずだがこのステップをどの施設で行ったのか等の経歴が全く記載されていない。
そして米国医学部卒の人間がこのレジデンシー・フェローシップの外科的トレーニングを行わないで心臓外科医として手術を行える環境は闇医者でもない限りない。
海外医学部卒の先生がACGME外のフェローシップを経てアメリカで心臓外科医として活躍されることは希にある。
更に、記事でもコーネルの心臓外科チーフが言っているように、外国人女性心臓外科医という当時では今以上に激レアな人種をコーネルの人間が覚えていないわけがない。
プローブを使って行うバイパス手術
これは意味不明。
胸骨切開無しで行う底侵襲の方法は1996年に症例報告がLancetに出て
Calafiore AM and Angelini GD. Left anterior smallthoracotomy (LAST) for coronary artery revascularisa-tion. Lancet. 1996; 347: 263–4.
以来2006年頃には確かにそれなりに普及していたと思うのだが「プローブを使う」という言い方は心臓外科医としてかなりおかしい。
百歩譲って完全胸腔鏡視下のことだったとしてもその成功例が報告されたのはかなり後の話。
多いときで年間300例
これが一番決め手だと思うのだが、コーネル大があるニューヨーク州で心臓手術を行う場合、バイパス手術と弁膜症手術の成績が外科医ごとに実名付きで州のDepartment of Healthのサイトに公表される。
以下は2004-2006年のデータで、コーネル大附属病院に日本人らしい名前の心臓外科医は載っていない。
症例数の低すぎる外科医はOthersというカテゴリに入れられていたのが気になったので10年分遡ったが日本人名はなかった。そして施設内でも年間300例を超えているのは二人しかいない。

アメリカで手術を何本かすると何千万
1990年代後期にCABGに対するCMSの支払いが劇的に減ったことも手伝って、数例で何千万円という収入になることはまずあり得ない。
うちの上の人から聞いた話では3枝バイパス手術一例で外科医の収入になるのは1000ドル(約10万円)いくかいかないかだそうだ。コスト含めて病院に保険から支払われる金額は数千万単位で合っているのだが、出費がバカにならないので外科医の収入に繋がるのはホンの一部。
アメリカでは“本名”が一番大事な個人情報
まぁ。。スルー。本名を公表できない医者に自分の心臓を触られたくはない。
まとめ
色々おかしい。