前回の邪道編では、タイトルの通りとにかく数を稼ぐことだけを意識した場合の方法を紹介した。
実際にアカデミアで生き残るためにはおそらく通用しない手段なので、ネタ程度で受けとめておいてほしい。
さて本題
結論から言うと、即効性のあるテクニックや知識は存在しないのではと思う。
というよりは、回避可能な落とし穴を避けながら何をどう頑張ればいいかを追求する、というような上達論的な話
ただ、僕がこの記事に需要があるのではと思う理由は、
僕自身が書き始めたばかりの頃、忙しい指導教官に放置され
採択までのイメージが全く湧かずありとあらゆる落とし穴にハマりまくりかなり試行錯誤した
のでもし似たような境遇にいる人がいれば参考になるのではと思う。
臨床論文を書きまくるには:
1. レベルは低くていいから全ての手順を自分でこなせるようになる。
これはスタディーデザイン、IRB(施設内審査の申請)、データ集め、解析、執筆、サブミット、レビュアーへの返事・反論を経てアクセプトまでの全ての行程を指す。
どれだけ質が低くても、この一連のプロセスをこなして肌感覚があるのと無いのでは、最適化へのイメージの湧き具合が全く違うと思う。
というのも、一連の流れを理解していないと至るところで落とし穴にハマりやすい。
スタディーデザインやデータ集めは解析のアプローチを意識して行わないと、さぁ解析しようかという時点でとんでもない問題が見つかることがある。
地味な例えになるが、学生時代の実体験:
n=400くらいのスタディーのために心臓手術後のエコーから拍出量やら10個くらいの変数を集める、という作業で
数日かけてデータ集めをした後にエコーの日付を記録し忘れていたことに気付いてもう一度400のカルテをレビューし直した後
さぁ解析かというところで、複数エコーのある患者の場合どのエコーを使うかを定義していなかったので、術後最初にとられたものだったか一年後以降のものだったのかetcが標準化されておらずにもう一度定義に沿ったエコーのデータを採るために400カルテを再度レビューし直した。
時間にしてみれば1週間程度の遅れだったと思うが、データ集めを始める段階で予見していれば簡単に避けられたミスなだけに精神的にも疲弊するしプロジェクトの勢いみたいなものも削がれてしまった
こういった地味なミスが重なって結局プロジェクトが頓挫する、というのは割とある話ではないだろうか。
更にあとの方で、デザイン的にはn=400から更に除外項目をかけて250くらいのもっとピュアなコホートを使った方が良いことに気づき、もっとデザインを詰めていれば差の150人分のデータ集めにかけた時間が節約できたことを軽く悲しがったり
更にもっと後の方で、この再入院の変数はどう定義したの?みたいな質問が共著者から来た時に、
前もって定義を書類化していなかったため標準化されておらず、「手術関連っぽい」理由での再入院以外はカウントしていなかったという、曖昧で再現不能な変数をアウトカムとして使っていた、とか。
こんな凡ミス経験はいくらでもあるのだが割と時間のあった学生時代にたくさん間違って経験値を稼げたのはせめてもの救いだった。
しかしかなりのミスは一連のプロセスを理解していれば避けられたものなので、おなじ間違いをあえて経験することは全く必要ないと思う
データマネジメント、解析、執筆はスキルとしては全く別物だが
とにかく一連の流れがイメージできて2手3手先に何が必要かが予想できるようになることは一番大事だと思う。
そしてそれを習得するには、質が低くてもいいから、この世の全てのジャーナルにリジェクトされてもいいから、とりあえず一本最初から最後までやり切るのが最短距離だと思う。
Part 2 はデータマネジメント・解析に触れる
One thought on “臨床論文を量産する方法:まじめ編 Part 1”