科学の発展に貢献する、などのキレイゴト抜きでとにかく量を稼ぐ方法は存在する。
別の記事でも書いたように、数がモノを言う場面というのは存在するわけであって、次につながるような機会をもらえる「数」を稼ぐテクニックをまとめる。
ただ「ほとんどの臨床論文は無意味」なのでここで紹介する邪道テクニックはネタ程度で受け止めてほしい。
以上を踏まえたうえでどうぞ
1. Letter to the Editor
Research letter は短いが立派なサイエンティフィックな論文であるのに対して、Letter to the editorは人の論文に対するコメント。俗に uninvited editorial (依頼されていない論説) などと言われる。
Editorialは際立ったレビュアーやそのトピックの権威にジャーナルが依頼して書いてもらうものに対して letter to the editorは読者が誰でも寄稿できる記事。
もちろん、有意義なコメントが割とフェアな観点から書かれているものが採択されるのだが、ほとんどのものが500語くらいの超短編で採択率もかなり高い。
僕は今までに5本書いたが全て採択されている。
PubMedにもインデックスされるし、もちろんCVに載る。
ただ、ファカルティークラス(助教以上)になると昇進用のCVにEditorial/Letter のセクションを論文のセクションと別に設けている人がほとんどだと思う。
原著論文 一本仕上げるのとletter to the editor 一本では労力も価値も全く違うので同じ一本として扱うのはアンフェア、という認識からだろう。
ちなみに僕は毒にも薬にもならないような letter to the editor がJAMAに掲載された経験がある。当時の研究トピックにハマった論文がJAMAに掲載されていたので、4時間くらいで仕上げて投稿した。
もちろんJAMA論文、という認識はまったくない。
また、メソッドが破綻しているスタディーを指摘するレターは有益なのではと思う。
僕も一時期使っていたNational Inpatient Sample という、全米入院データサンプルを使った論文がクリー○ランドクリニックのグループからJAMA Surgery に掲載されたが、致命的な欠陥があったのでそれに関するレターを書いたことがある。
National Inpatient Sample ではデータの性質上、併存症と合併症の区別ができないはずなのに、併存症だったかもしれない合併症をoutcomeとして行われたスタディーだったのでそこを指摘した。
レターの利点は採択率が高いのとエディターのみの査読なのでターンオーバーが早い。僕が今までに書いた4−5本のレターは採択率100%。早いものでは翌日返事がきた。
ただ、そのジャーナルにリジェクトされてしまったら次に行くアテがなくなってしまうので執筆に時間を投資しすぎるのはあまり良くないかもしれない。
2.レビュー
システマティック・レビューが確立されたメソッドに基づいているのに対して、ほとんどのreview article はいわゆる narrative review というカテゴリーに当てはまる。
Narrative review はその分野の「専門家」が書く、既存の重要なスタディーをうまい具合にまとめ上げた記事。
メソッド部分がない(引用するスタディーは著者が勝手に選ぶ)ためそのトピックの重要論文を把握していれば、少し上手いアングルをとることでレビューを書くことは可能。
3000-3500語ほどの長さがほとんど。
教科書の章(Book chapter)を執筆するような雰囲気。
ただ科学的なアプローチが無いし、要は他人の論文のまとめなので book chapter/narrative review はよほどユニークなものでない限りは意味なし、という教授も僕の周りにはたくさんいる。
ジャーナルによってはレビュー記事はエディターから依頼されたもののみ受け付けるというところもあるが、’unsolicited’ (依頼なしで自分たちで勝手に書いたもの)でも受け付けているところは多数あるのでreject されてしまってもいくアテが沢山あるのは利点。
また、もし周りにレビューの依頼が沢山くる大御所のファカルティーがいる場合は直接その教授に聞いてみてもいいかもしれない。そのアプローチでまわしてもらえる依頼はほとんどが低インパクトのジャーナルだろうが、実績には変わりないのでアリだと思う。
依頼なしのレビューを書く場合は最低でも一人その分野である程度認知されているファカルティーが著者に含まれているのは絶対条件だと思う。
3. 等価交換
要は「自分の論文の共著者にしてやるからお前の論文に自分の名前を入れてくれ」という邪道メソッド。
ハッキリ言わずともなーんとなくそういった関係が出来上がっている上層部は沢山いると思う。
いち研修医である僕にですら「そういうことにしない?」というあからさまなアプローチが来たことがあったがあからさまに邪道すぎてお断りした。
「この論文を読んでコメントくれ」というのは一般的な共著者へのアプローチで、まぁアリなのではないだろうか。
根底にあるべきなのは、論文を改善するために本当にその共著者のインプットが必要、という状況なのだろうが、専門がかぶっている小さいグループの中で、ユニークな観点や知識を持っている人間がどれだけいるだろうか。
昇進を決める場合にはファーストもしくはラストオーサー以外は業績としてカウントしない、という大学があるのはこういった背景があるのではないだろうか。
まとめ
邪道編で紹介した3つの方法にはどれもある程度の防衛策が存在する。Letter to the editor やreview article は昇進レベルの話になるとCVの別枠として考慮され、ファースト・ラストオーサー以外の論文はカウントすらされない場合もある。
結局は研究して自分で論文を書かなければいけない。
ではどうすれば臨床論文が効率よく書けるようになるのか。
One thought on “論文を量産する方法:邪道編”